英語で効果的なキャッチコピーを書くには、日本語の単語を英語に移す前に、そのコピーで読み手に何を感じてほしいのか、何をしてほしいのかを決める必要があります。日本語で自然に響く短い一文も、直訳すると意味が曖昧になったり、文法的に不自然になったりします。さらに、日本企業が安心して選ぶ定番の言葉ほど、英語では中身のない言葉に聞こえがちです。私は日本に20年以上住み、15年以上、日本語の原文から英語のコピーを書いてきました。実際に英訳を依頼された例を使いながら、英語のキャッチコピーを書くときの考え方を具体的に説明します。
ポイント
- 直訳する前に、読み手に感じてほしいことと取ってほしい行動を決める
- 「新しい価値」「挑戦」「未来」などの定番語は、英語では中身のない言葉に聞こえやすい
- ダジャレは無理に訳さず、ユーモアが目的のときだけ英語で作り直す
- 候補は3〜5案に絞り、公開前に対象市場のネイティブに読んでもらう
Contents
日本語のキャッチコピーを、そのまま英語に直訳してはいけないのですか?
直訳すると、日本語では成り立っていた省略やリズムが崩れ、英語では意味の通らない一文になることが多いからです。日本語のキャッチコピーは、助詞や読点で余韻を残し、主語を省いても伝わります。英語は主語と動詞の関係がはっきりしないと、読み手は何を言われているのか分かりません。
私がこれまで英訳を依頼されたキャッチコピーから、3つを例に挙げます。
| 日本語の原文 | 直訳 | 私が提案した英語 |
| 肌に、正直に。 | Be honest to your skin | Skin, unfiltered / No pretense. Just skin. / Honest skin starts here |
| 挑戦する人を、応援する会社。 | A company that supports people who challenge | We back the ones who go for it / Built for people who take the leap / For those who don’t wait for permission |
| 面倒くさいを、なくす。 | Eliminate the troublesome | Say goodbye to busywork / Less hassle. More done. / We handle the annoying part |
“Be honest to your skin” は、英語では「肌に対して正直であれ」という説教のように聞こえます。原文の「正直に」が伝えたいのは、飾らない、偽らないという製品の姿勢です。”challenge” は、目的語を取らずに「挑戦する」という意味ではあまり使われず、people who challenge は「異議を唱える人」と読まれるおそれがあります。”the troublesome” は名詞としての使い方が不自然で、何が面倒なのかも伝わりません。
ウェブの読み手は、ページの文章をほとんど読みません。2008年の調査では、平均的なウェブページで読む時間があるのは文字の最大28%、実際に読まれるのは約20%と推計されています。アプリのボタンや見出しのような短い言葉でも同じで、一語ずつ置き換えた英語は正しそうに見えても不自然になります。
自社のキャッチコピーの英訳に迷っている場合は、MacroLingoのコピーライティングサービスで、原文の意図を確認したうえで複数の案を提案しています。
「新しい価値」は、英語でどう表現すればいいですか?
多くの場合、value という言葉を使わずに、その会社が具体的に何を届けるのかを書くのが近道です。「新しい価値」は日本企業のブランドステートメントや企業理念で特によく見かける言葉ですが、英語にすると中身のない一文になりがちです。
よくある訳は “creating new values” です。ただ、value を複数形の values にすると、英語では「価値観」、つまり人が善悪や大切なものを判断する基準となる信念や原則の意味になります。「新しい価値観を生み出す」と言いたい企業はまずありません。単数の “new value” に直しても、読み手は「それはそうだろう」と感じるだけです。価値を生み出さない会社はないからです。

“new forms of value” や “new standards of value” に言い換えることもできますが、それでも抽象的なままです。私は、「新しい価値」の中身を説明する言葉を足すか、value という単語を使わずに訳します。たとえば「新しい価値で、未来を動かす。」という典型的な企業メッセージなら、”Bringing new value to everyday life” や、”Offering you new ways to [製品や事業に関係する動詞]” のように、読み手の生活や仕事に結びつけます。
日本企業のキャッチコピーでよく使われる定番語は、英語でどう言い換えればいいですか?
挑戦、革新、未来、共創のような言葉は、日本語では前向きで安心感のある選択ですが、英語にすると多くの企業が同じことを言っているように聞こえます。無難な言葉を選ぶほど、他社との違いが見えなくなります。私が実務でよく見かける言葉と、言い換えの例を挙げます。
| 分類 | 日本語 | 直訳 | 言い換えの例 |
| 成長・変化 | 挑戦 / チャレンジ | Challenge / Challenging | Pioneering / Driven / Transforming |
| 成長・変化 | 創造 / クリエイト | Creation / Create | Building / Designing / Inventing |
| 成長・変化 | 革新 / イノベーション | Innovation / Reform | Breakthrough / Reimagining / Forward-thinking |
| 成長・変化 | 未来 / フューチャー | The future | Tomorrow / Next-generation / Ahead |
| 成長・変化 | 共創 | Co-creation | Partnership / Collaborative / Together |
| 成長・変化 | 変革 / トランスフォーメーション | Transformation / Change | Evolution / Reshaping / Disrupting |
| 成長・変化 | 推進 | Propulsion / Driving forward | Accelerating / Leading / Advancing |
| 価値・品質 | 価値 / バリュー | Value | Impact / Purpose / Standard |
| 価値・品質 | 豊かさ | Richness / Abundance | Well-being / Enhancing lives / Prosperity |
| 価値・品質 | 感動 | Deep emotion / Being moved | Inspiring / Delighting / Captivating |
| 価値・品質 | 安心 / 安全 | Peace of mind / Safety | Trusted / Reliable / Secure |
| 価値・品質 | 快適 | Comfort / Pleasant | Seamless / Effortless / Intuitive |
| 価値・品質 | 品質 / クオリティ | Quality | Excellence / Craftsmanship / Precision |
| つながり・社会 | 寄り添う | To nestle close / To walk alongside | Human-centric / Dedicated / Supporting |
| つながり・社会 | 繋ぐ / コネクト | Connect / Link | Uniting / Bridging / Integrating |
| つながり・社会 | 笑顔 | Smile / Smiles | Happiness / Thriving / Joy |
| つながり・社会 | 社会貢献 | Social contribution | Sustainable impact / Community-first / Giving back |
| 呼びかけ・方向 | 〜へ / 〜に向かって | Toward… / To… | Beyond / Destination |
| 呼びかけ・方向 | 〜しよう / レッツ〜 | Let’s… | 動詞で始める(例:”Let’s change” ではなく “Lead the change”) |
| 呼びかけ・方向 | 共に | Together | As one / Unified / Side by side |
※言い換えは、製品や対象読者、コピーのトーンによって変わります。単語を入れ替えるだけでは、自然なコピーにはなりません。
大手企業の英語スローガンにも、定番の言葉は使われていますか?
使われています。長く使われている日本の大手企業の英語スローガンにも、better や next のように、多くの企業が選ぶ言葉が見られます。どれも長年のブランド資産を持つスローガンで、書き換えるべきだという意味ではありません。今ゼロから書くとしたらどんな方向性があるかを考えると、言葉選びのヒントになります。
三菱電機は2001年に、国内外で統一したコーポレートステートメント「Changes for the Better」を制定し、現在も使っています。「常により良いものをめざし、変革していく」という姿勢を表す言葉です。パナソニックは2013年、創業100周年に向けたブランドスローガン「A Better Life, A Better World」を定めました。日立の「Inspire the Next」は、Nextのあとに言葉を置かないことで、見る人が時代や製品を自由に思い浮かべられるよう設計されています。
| スローガン | よく見かける言葉 | 別の方向性の例 |
| Changes for the Better | better | Always improving the things you rely on |
| A Better Life, A Better World | better | Making everyday life work for you |
| Inspire the Next | inspire、next | Powering what society runs on |
中小企業が大手企業と同じ言葉を選ぶと、ほかの会社と区別がつきにくくなると私は考えています。
ダジャレや言葉遊びは、英語でも再現できますか?
漢字の読みや日本語のことわざに頼ったダジャレは、そのまま英語にはなりません。ユーモアがコピーの目的なら英語で新しく作り直し、そうでなければ、すっきりした自然な英語を選びます。
私のクライアントの中に、社内プロジェクトやイベントの名前、ときには英訳するコピーにもダジャレを好んで使う会社があります。一つの漢字が複数の意味を持つことや、日本のお笑いのネタを踏まえた言葉遊びは、英語に移すと意味が通りません。その会社は、ユーモアが必ずしも翻訳できるわけではないことを理解してくれています。

一方で、文脈が合い、無理をしている印象にならなければ、英語でユーモアを作り直せます。私も、言葉遊びを求められた案件で、英語の別の言葉遊びに置き換えたことがあります。気をつけたいのは、笑わせようとしすぎることです。狙いが見えすぎるユーモアは面白くなく、かえってブランドの印象を下げます。
日本語の遊び心を英語でどう表現するか迷う場合は、翻訳・ローカライゼーションサービスで、ユーモアを残すか、自然な英語に置き換えるかを一緒に判断しています。
英語のキャッチコピーは、何案くらい提案してもらうのがいいですか?
数の指定がない場合、私は3〜5案を提案しています。1案だけでは比べようがなく、多すぎると選ぶ側の負担が増えるからです。指定された数があれば、その数を守ります。
クライアントの多くは、キャッチコピーでも「翻訳」として1つの答えを求めて依頼してきます。ただ、どの言語でも、キャッチコピーを1案だけ出すのでは足りません。駆け出しのころの私は、英語が得意で方向性がはっきりしているクライアントにも15〜20案を出していました。今振り返ると、相手の時間と手間を増やしていただけでした。5案を超えそうなときは、自分でもっと厳しく絞るべきだと考えています。
直訳から離れた英語を、社内でどう承認してもらえばいいですか?
依頼の最初に、直訳を求めているのか、自然な英語を求めているのか、そのコピーで何を達成したいのかを確認しておくことです。最初に目的が共有されていれば、原文から離れた案でも判断しやすくなります。
私に判断を任せてくれるクライアントもいれば、原文の言葉をできるだけ残したいクライアントもいます。私はできる限り判断を任せてほしいと伝えていますが、担当者に報告先の上司がいることも理解しています。原文と大きく違う英語は、上司を不安にさせることがあります。
目的が、誰にでも分かる自然で確実な英語であれば、その方向で書きます。目的が、創造的で、ビジネスの成果を狙えるコピーであり、その判断を私に任せてもらえるなら、結果は良くなりやすいです。どちらを選ぶかは、クライアントの事情によります。依頼時には、対象市場に合わせてアメリカ英語とイギリス英語のどちらで書くかも、同じ最初の確認に含めてください。
英語のキャッチコピーは、公開前にどう確かめればいいですか?
対象市場のネイティブに読んでもらうことです。ビジネスの成果が期待されるコピーなら、フォーカスグループで反応を確かめることを強く勧めます。
クライアント自身がテストできる対象者を持っているのが理想ですが、必要であれば私のほうで手配することもできます。キャッチコピーに限らず、製品名のネーミングでは特に欠かせない工程です。私は以前、米国市場向けのブランドを立ち上げるクライアントと仕事をしました。そのクライアントは自社でフォーカスグループを実施しており、多くの案と、それぞれの理由の説明を求め、さらに私に質問を重ねて一つずつ検証しました。手間はかかりますが、非常に良い進め方でした。
AIに候補を出させるのは手軽ですが、AIが出すコピーは平均的な言い回しに寄りやすく、AIスロップになりがちです。AIの案を使う場合も、ネイティブの目と対象市場の反応で確かめてください。
キャッチコピーは、英語サイトの成果やAI検索にも影響しますか?
影響します。キャッチコピーは、英語サイトで読み手が最初に目にする言葉の一つです。
実際、多くの日本企業の英語サイトが、伝わらない英語のために問い合わせにつながっていません。AI検索の要約もページに書かれた言葉をもとに作られるため、AI検索の結果で自社がどう紹介されるかにも、ページ上の言葉の選び方が関わります。
MacroLingoでは、どんな業界のキャッチコピーを手がけていますか?
ソフトウェア、医療機器、製薬、観光、化粧品、翻訳サービス、産業用製品まで、BtoBとBtoCの両方でキャッチコピーを書いてきました。クライアント名は公開していませんが、主な案件は次のとおりです。
| 依頼元 | 分野 |
| 日本のSaaS企業 | エンタープライズソフトウェア |
| 日本の医療機器メーカー | 手術用機器 |
| 日本の製薬会社 | 医療・研究用の酵素 |
| 日本の広告代理店 | 観光キャンペーン |
| 日本のデザイン会社 | 化粧品 |
| 日本の翻訳会社 | 翻訳サービス |
| 韓国の手袋メーカー | 防護手袋 |
分野が変われば、読み手も、響く言葉も変わります。手術用機器を選ぶ病院の購買担当者と、観光キャンペーンを目にする旅行者では、求める情報も言葉の温度もまったく違います。自社の業界に合わせた英語のキャッチコピーが必要な場合は、MacroLingoのコピーライティングでご相談ください。
私は15年以上、英語ネイティブとして日本企業のキャッチコピーやブランドメッセージを英語にしてきました。日本語の原文と、誰に届けたいのかを教えていただければ、目的に合った英語のキャッチコピーを複数お出しします。経歴の詳細は会社概要でご覧いただけます。
英語のキャッチコピーについて、よく聞かれる質問
キャッチコピーの英訳と、英語のコピーライティングは何が違いますか?
英訳は原文の意味をできるだけ正確に移す作業で、コピーライティングは読み手の反応を狙って英語で書き直す作業です。キャッチコピーでは、原文の言葉を残すよりも、原文が狙っていた効果を英語で再現することを優先する場合がほとんどです。
英語のキャッチコピーは、何語くらいが適切ですか?
決まった語数はありません。この記事で挙げた例は2〜8語です。語数よりも、一度読んで意味が伝わるかどうかを基準にしてください。
日本語のキャッチコピーを、AIで英訳してもいいですか?
候補を出す段階では使えますが、そのまま公開するのは避けてください。AIは原文の単語に引っ張られやすく、日本企業の定番語を英語の定番語に置き換えるだけになりがちです。
大手企業と似た英語スローガンを使ってもいいですか?
使うことはできますが、勧めません。大手企業のスローガンは長年の実績に支えられています。同じような言葉を選ぶと、自社ならではの強みが伝わりにくくなります。