英語の記事や製品ページを公開していても、海外からの問い合わせが増えないことがあります。英文として読めるかどうかに加え、読み手が自分の課題と製品の関係を理解し、比較や相談に必要な情報を得られるかを確認する必要があります。
ここでいうリードとは、資料請求や問い合わせなどを通じて接点ができた見込み顧客です。件数だけを増やしても、販売できない地域や対応できない用途からの相談ばかりでは、営業の負担が増えます。本記事では、日本企業が英語コンテンツを制作する際に、読者の設定、説明の内容、文体、検索への対応、問い合わせ後の運用をどう考えるかを説明します。
海外の顧客は、一つの記事だけで購入を決めるわけではない
McKinseyが2026年5月に公表したB2B購買調査は、13か国の約4,000人の意思決定者を対象としています。購買過程で利用する接点は平均10種類で、生成AIも仕入先の発見・評価に使う上位5つの経路に入りました。ウェブサイト、対面でのやり取り、ウェブ検索、ビデオ会議も、この5つに含まれます。
この数字は、日本企業の英語記事だけの効果を測ったものではありません。ただし、記事を読んだ後に製品ページや営業担当者へ移ることを前提に、情報を用意する必要があるとわかります。記事では対応できると説明しているのに、製品ページでは条件が違うという状態を避け、名称、仕様、対象用途を各資料で統一します。
1. 「英語圏」よりも、読者の仕事と判断基準を具体的にする
「日本人は間接的、西洋人は直接的」といった区分だけでは、必要な文章は決まりません。同じ国の読者でも、業種、役職、専門知識、検討段階によって知りたい内容が違います。英語を第二言語として使う担当者にも読まれるため、地域固有の冗談や慣用句が説明を妨げないかも確認します。
例えば、検査装置を海外に販売する場合、技術者は検出対象や測定条件を確認し、購買担当者は供給体制や保守の範囲を調べます。経営層には、導入費用と運用への影響を説明する資料が必要です。一つのページにすべて詰め込むより、概要から必要な詳細へ進める構成にすると、担当者が自分の判断に必要な部分を読めます。
制作前には、対象国、担当者の役割、想定用途、問い合わせ前に解消したい疑問を決めます。営業担当者が実際に受けた質問や、比較の途中で商談が止まった理由を使うと、根拠のない顧客像を作らずに済みます。読者別に情報を変える方法は、BtoBコンテンツのパーソナライゼーションの記事でも紹介しています。
2. 日本語原稿の前提を、海外の読者が理解できる説明にする
直訳で意味が伝わらない原因は、単語の選び方だけではありません。日本語の原稿が社内や国内業界で共有されている背景を省略していると、英語にしても説明不足が残ります。「独自技術による高品質なソリューション」という表現を訳す前に、どの用途に使え、何が従来の方法と異なるのかを確認します。
ローカリゼーションは、対象地域の読者に合わせて表現や情報の示し方を調整する作業です。日付、通貨、単位、販売地域、保守・保証の条件なども対象になります。英語の表記を選ぶ際は、アメリカ英語とイギリス英語の違いを踏まえ、サイトや資料の表記を統一します。
説明を具体的にするために、原稿にない性能や対応範囲を加えてはいけません。確認できていない条件は技術担当者に戻し、承認された内容を使います。日本語で製品の仕組みを理解できる担当者と、対象読者に自然な英語を書ける担当者が協力すると、事実確認と文章の改善を分担できます。
AIで下書きを作る場合も、背景資料と人の判断が必要
生成AIは見出し案や下訳の作成に使えますが、製品の背景や顧客との約束を自動的に理解するわけではありません。自然に読める英文でも、略語の意味、数値の条件、競合との差を取り違えることがあります。出力が流暢かどうかと、公開してよい内容かどうかは、別々に確認します。
AIを使う前に、対象読者、承認済みの用語、最新版の仕様、公開可能な事例、避けるべき表現を区別して渡します。旧版の資料や未確認の説明が混在していると、出力の根拠を追えません。豊富で一貫した資料があっても、製品を理解する人が数値や条件を照合し、ライターが説明の順序と用語を見直す工程は必要です。
3. 見出しと導入では、読み手が何を判断できるかを伝える
「革新的」「世界最高」「高品質」といった評価だけでは、他社製品との違いを確認できません。見出しには用途や対象を示し、導入ではそのページで確かめられる内容を説明します。技術資料の見出しと広告の見出しは目的が違うため、すべてを強い宣伝文句にする必要はありません。
仮に食品包装の検査装置を紹介するなら、「Innovative solutions for your business」よりも、「Inspection systems for food packaging」の方が、何を扱うページかがわかります。ただし、検査方法や対象まで書くには、その情報が事実として確認されている必要があります。見出しで約束した内容は、本文の仕様や説明で確かめられるようにします。
英語の短い宣伝文句を作る際も、日本語の語順や語感をそのまま移すだけでは足りません。英語のキャッチコピーの作り方を参考に、誰に何を伝えるかを決めてから表現を検討します。本文を短くする場合は、購入条件や注意点まで削らないように確認してください。
4. 文体は、読者との関係と情報の用途に合わせる
BtoBなら必ず堅く、一般消費者向けなら必ずくだけた文体にする、という分け方は適切ではありません。技術者向けの製品説明には正確な用語と条件が必要ですが、問い合わせへの案内は丁寧でわかりやすい文章にできます。消費者向けでも、安全性や契約条件に関わる説明は、曖昧にせず書く必要があります。

英語の丁寧さは、日本語の敬語を一語ずつ対応させて作るものではありません。相手が判断できる情報を示し、依頼の内容や期限を明確にすることも、配慮の一部です。地域や業界で使われる表現を確認しながら、不要なスラング、冗談、過剰な催促を避けます。
公開前の確認では、「自然な英語ですか」とだけ聞くより、対象読者に製品の用途、特徴、問い合わせ先を説明してもらうと、伝わっていない部分を見つけられます。母語話者であることだけを基準にせず、業界への理解、日本語原稿を読める力、事実と宣伝表現を区別する力も確認します。
5. 品質や技術の強みを、検証できる事例で説明する
「日本製だから高品質」という主張だけでは、読者は採用の根拠にできません。品質の何を管理しているのか、どの条件で性能を確認したのか、導入先のどの作業が変わったのかを示します。日本の伝統や開発者の思いを紹介する場合も、それが製品の設計や利用者の判断にどう関係するかまで説明します。
導入事例は、導入前の課題、選定理由、実施内容、確認できた結果の順で書くと、読み手が自分の用途と比べられます。結果に数値を使う場合は、対象、測定期間、比較方法、適用条件を添えます。一つの導入先の結果を、すべての顧客に当てはまる効果として書いてはいけません。
写真や図にも役割を持たせます。製品写真は仕様の確認に、工程図は仕組みの理解に、グラフは条件をそろえた比較に使います。生成した写真を実際の顧客や導入現場として紹介せず、製品の外観や実績を示す部分には確認済みの資料を使ってください。本文中の写真のキャプションには、見たままの説明だけでなく、その場面と読者の判断がどう関わるかを書きます。
6. SEOとAI検索への対応を、根拠のある英語コンテンツに組み込む
SEOは、検索エンジンがページを理解し、読者が必要な情報を見つけられるようにする取り組みです。英語コンテンツでは、日本語の検索語を直訳する前に、対象市場で使われる製品名、用途、課題の表現を調べます。検索で知りたい内容と見出し・本文が一致するように書き、関連する製品や資料へリンクします。
GoogleのAIによる概要やAIモードでは、AIが生成した回答とともに参照リンクが表示されます。AI検索への対応は、AI-SEO、生成AI向けの最適化を指すGEO、回答エンジン向けの最適化を指すAEOなどと呼ばれます。機能の違いは、AIモードとAIによる概要の記事で説明しています。
GoogleのAI検索の公式ガイドは、従来のSEOの基本がAIによる概要とAIモードにも有効で、専用の構造化データやAI向けファイルは不要としています。参照リンクとして表示されるには、ページが検索用のデータベースに登録(インデックス)され、通常の検索でスニペット(ページの短い説明)を表示できる状態であることが必要です。ただし、条件を満たしても掲載は保証されません。
アクセス数に加え、訪問した読者の行動も確認する
Pew Research Centerが2025年7月に公表した検索行動の分析では、AI要約が表示された検索ページで通常の検索結果がクリックされた割合は8%、表示されなかったページでは15%でした。米国の成人900人の2025年3月の閲覧記録を基にした分析で、日本企業のサイトや現在のAIモードすべてに、その割合を当てはめることはできません。
この結果だけで自社のアクセス減少の原因を断定することはできませんが、検索順位や訪問数だけでは、コンテンツの成果を判断できないとわかります。訪問した読者が仕様を確認したか、資料を取得したか、条件に合う問い合わせをしたかまで調べます。記事には出典、対象条件、更新内容を示し、図表の中にしかない主要な情報は本文にも書きます。
7. CTAは、読者の検討段階と問い合わせ後の対応をつなぐ
CTA(Call to Action)は、資料の取得や問い合わせなどを案内する文言やボタンです。製品を初めて知った読者に購入を求めても、判断材料が足りません。検討の進み具合に合わせ、仕様書、導入事例、技術相談、見積もりなどへ案内します。

| 読者が知りたいこと | 案内する内容 | 英語のCTA例 |
|---|---|---|
| 自分の用途に使えるか | 用途別の説明と製品概要 | Explore applications |
| 他の製品と比較できるか | 仕様、適用条件、比較資料 | Download specifications |
| 自社の条件で導入できるか | 技術相談と事前に必要な情報 | Discuss your application |
| 費用や納期を確認したい | 見積もり依頼と販売条件 | Request a quote |
「Click here」のような文言では、操作後に何が起きるかわかりません。資料を渡すなら内容と形式を示し、登録が必要なら事前に伝えます。実際には期限や数量制限がないのに、期間限定の表現で急がせたり、確認できない利用者数や推薦の言葉を載せたりしないでください。
フォームでは、海外の住所や電話番号を入力できるか、エラー表示と受付メールも英語かを確認します。送信後の担当者、必要な追加情報、回答までの目安も決めておきます。文章以外の改善点については、英語版ウェブサイトで問い合わせが来ない原因の記事が参考になります。
制作、確認、公開後の改善を、担当者が引き継げる形にする
まず海外向けの主要な製品か用途を一つ選び、読者の疑問と公開できる根拠を確認します。記事、製品ページ、資料、問い合わせフォームをつなぎ、技術担当者が事実を、ライターが説明と英語表現を確認します。公開前には、読者の立場でページを読み、資料の取得や送信まで実際に試します。
公開後は、対象市場からの訪問、資料の取得、条件に合う問い合わせ、商談への移行を記録します。件数が少ないときは、短期間の割合だけで判断せず、営業担当者が受けた質問も原稿に反映します。製品の仕様や販売条件が変わった場合に、記事と資料を誰が更新するかまで決めておくと、説明の食い違いを防げます。
MacroLingoは、日本語の意図を踏まえた英語コンテンツの企画・執筆、翻訳、SEO・AI検索への対応を支援しています。英語の製品ページや記事を見直したい場合は、対象市場、現在の原稿、問い合わせにつなげたい内容をお知らせください。日本語で相談できます。